9月はクラウドファンディング、10月に入ってからはプリンセスサリーの収穫など忙しく過ごしていましたが、ちょっとだけ落ち着いてきた今日この頃です。
「クラフトビールを作ってみんなと乾杯したい!」という想いで実施したクラファンは、最終的に218名の方から2,814,000円のご支援をいただき、達成率140%で終えることができました。本当にありがとうございます。
“みんなで乾杯”イベントや返礼品のお届けに向けてビールの製造を進めていくので、楽しみにお待ちいただけたら嬉しいです!
さて、これまで、僕たちが「大切にしていること」と「届けたい価値」についてお伝えしてきました。
今回は、出雲SPICE LAB.が目指す未来についてお話ししたいと思います。
ビジョンを描くこと
企業が目指す未来は「ビジョン」という形で示されることが多いと思うのですが、実は僕、ビジョンを描くことが苦手です。
目指す姿を掲げ、そこに向かって頑張るというよりも、目の前のことを一所懸命積み上げて、その過程で生まれる化学反応やアイデアを形にしていく方が得意なタイプ。
ただ、そうは言ってもビジョンが必要だなと感じたのは、会社を始めてから1年経つか経たないかくらいの頃。「俺らってどこに向かっていくんだっけ?」というのが定まっていないと、経営判断もしにくいし、一緒に働く仲間を迷わせてしまうなと痛感しました。
それに、出雲SPICE LAB.を応援してくれる人たちに対しても、僕たちが目指しているものをちゃんと共有したいな、という気持ちもありました。
そのタイミングで設定したのが、このビジョンです。
なんだか抽象的でぼんやりしているかもしれませんが、苦手なりに一生懸命設定してみました。
無農薬スパイスと手づくりの美味しさ
ビジョンの前半部分に込めているのは、「手づくり」に対する想いです。
世の中には美味しいものが溢れているし、レストランで食べる美味しいご飯は人生を豊かにしてくれる。僕も外食は大好きでよく食べに行きますが、一方で、ずっとそれを食べ続けていると、身体がしんどくなったり、そればっかりでは心が躍らなくなったりするよな、と思います。
そんなときに、人生をまた彩ってくれるのは、朝ごはんのお味噌汁だったり、なんてことない卵焼きだったり。そういう、手づくりの慣れ親しんだ味なんじゃないかなとも思っています。
レトルト食品やお惣菜も便利だし、しんどいときにはすごく助かるものだけど、「今日はいけるぞ」という日には手間をかけて料理をしてみる。そこで生まれるコミュニケーションや「美味しい」という感覚は、とても大切なものだと感じます。
つい先日、息子がお散歩帰りに栗をたくさん拾ってきました。
嬉しそうに「父ちゃん、見てー」と言っている姿を見ると、栗を美味しく食べさせてあげたいなという気持ちになりました。正直言うとめちゃくちゃ面倒くさかったのですが… お湯に浸けて鬼皮をふやかし、爪の間を痛めながら必死に剥がして、手を切らないかとヒヤヒヤしながら渋皮をむいて、栗ご飯にしました。
スーパーで栗ご飯を買えば一瞬で食べれるな… という考えが頭をよぎるものの、一口食べて、やっぱり美味しいなぁ…!と感動しました。同時に、口いっぱいに頬張る息子を見ると、めちゃくちゃ幸せな気持ちになります。こんな風に「自分たちの手で、想いを込めたご飯をつくる」という感覚をみんなで共有できる世の中ってやっぱりいいよな、と心から思った出来事でした。
ただ、すこーしばかり僕の心に影を落とすのは、農薬や化学肥料がたくさん使われた野菜や、添加物や保存料、食品と分からないような化学物質の名前が裏面表示に並んだレトルト食品が世の中の主流になっていること。せっかくご飯を手づくりしても、食材そのものや調味料が「便利」に寄りすぎ、「安心・安全」と言い切れない(あくまで僕の感覚ですが)状態では元も子もありません。
僕は自分で農業をしているからこそ、不自然なくらいに大きくて綺麗な野菜を見ると、農薬や化学肥料をどのくらい使ったのかな… と考えてしまうことがあります。もちろん素晴らしい農業技術の賜物であることも理解していますが、“不自然”だな、と感じることもやっぱりあります。
そういう作り方をするからこそしっかり収量が確保でき、市場に野菜が流通するという面もあるので、そこは頼りつつ、僕個人としては、環境や「安心・安全」に配慮して農業をしていきたい。そんな想いを込めて、「無農薬スパイス」という言葉もビジョンに盛り込んでいます。
関わる人みんなで心躍る瞬間を分かち合える世界をつくる
ビジョンの後半部分についてですが、僕は昔から“ワクワクすること”が好きでした。
いつもは普通のカレールーを使っていた親父が、突然こだわってスパイスカレーを作ったときの高揚感。母ちゃんが何を思ったのか、気まぐれに手作りおやつを作ってくれた時の「できたてって美味い!!」という感覚。
人生を振り返ると、非日常を感じられる瞬間や、自分の価値観が崩されるような発見があったときにとってもワクワクして、そのワクワクが幸せを作ってくれていたなと思います。
出雲SPICE LAB.も、そんな風に誰かにとってのワクワクを生み出せる存在になりたい、というのが一番根っこにある想いです。
前回書いたように、食卓や農業、日常の中にスパイスが加わることで、みんなの心にワクワクが芽生える。その人たちが混じりあい、連鎖して、さらに大きなワクワクが生まれる… そんな世界が実現できるといいなと思っています。
そんなわけで、ビジョンの後半部分には、僕が思い描く理想の世界観を表現してみました。
ビジョンに対する実感
とはいえ、正直なところ、今でも迷いがあります。
はじめに書いたように、苦手ながらも掲げてみたビジョン。目の前の具体的なことの方がイメージしやすい僕にとって、ビジョンはちょっと抽象的で遠いものに感じます。この内容でいいのか? 目指している姿に近づくことができているのか? なかなか実感が持ちにくいなぁという悩みは、現在進行形で抱えているところです。
だからこそ、イベントやアンケートなどでお客さんのワクワクが伝わってきた時はすごく嬉しいですし、やってきたことは間違っていなかったなと思えます。
そして今後は、もう少し直接的にお客さんと関われるような事業もやっていきたいなと思っています。「無農薬スパイスと手づくりの美味しさを通して」という部分は、もしかしたら変わったり、広がっていくのかもしれません。手段は何であれ、ワクワクする世界を作っていけるように、これからも楽しみながら頑張っていきたいと思います。
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今回もお読みいただきありがとうございました。
次回は、僕たちが大切にしているスタンスについてお伝えします。またお読みいただけると嬉しいです。