まるで縁側でお茶をしながら雑談するように、出雲SPICE LAB.代表の山田健太郎がおしゃべりをする連載『縁側じかん』。ライターの塩冶恵子が聞き手となり、健ちゃんがそのとき一番話したいことを自由に話してもらいます。
前回「幸せ」について話した二人。今回はその続きをお届けします。
人生は螺旋階段
最近は「幸せだなあ」と思いながら過ごしてるけど、「あれ、このままでいいのかな」と思ったり、ワクワク感が減ってきたりするときって絶対にまた来るやん?結局いつも同じようなことで悩んでるな~と思ったりもするけど、そういうときに思い出す言葉があって。
僕が心理学の勉強をしてたとき、先生が「人生は螺旋階段だよ」って言ってくれたんよね。何度も同じところに戻ってきているように見えるけど、実はぐるぐると螺旋階段をのぼっている。だから、ステージは上がってるんだよって話で。
それを聞いたときにめちゃくちゃ救われた気持ちになったんよね。自分では気づいてなかったけど、ちゃんと前に進んでるんだなと思えたし、その変化にちゃんと目を向ける必要があるなと思った。
──うんうん。
それに、「螺旋階段をのぼる自分」を俯瞰的に見ると、悩んでる時期も含めて幸せな気もするよね。断片的に見るとしんどいけど、悩む時期があるからこそ新たな発見があって、また階段をのぼっていける。だから、悩むときはしっかり悩み切るっていうのが大事な気がするなあ。
──たしかに。人生の中で、何の曇りもなく快晴!みたいな時期よりも、モヤがかかってたり、小雨が降ってたりするような時期の方が長いような気もする。でも、その時期があるからこそ熟成していくものがあるよね。
そうだね~。
──私もそれに気づいて、最近ようやく人生を長期的な目で見られるようになってきたかなあ。そしたらだいぶ楽になったよ。
おお!具体的には、どんな感じ?
──ライターとして独立したばかりのとき、仕事がもらえるのか、ちゃんと稼げるのかとか不安だったけど、「今はそういう時期だよね」って3年後の自分が微笑んでる…みたいな(笑)
いいね(笑)僕も「今やってることは必ず未来に繋がってるから、短期的にうまくいかなくても大丈夫」っていう感覚を持てるようになってからは楽になった。もちろん常に余裕でいられるわけではなくて、焦っちゃうときもあるんやけどね。
──花開くまで数年はかかるっていう感じだよね~。でも、「今すぐ幸せになりたい!結果がほしい!」って思っちゃうこと…なかった?
めちゃくちゃあったよ!「明日はない、今日がすべてだ!」みたいな、ほんとに目の前のことしか見てない時期もあったし(笑)でも、じっくり時間をかけて取り組んでいくっていう時間軸も自分の中に持っておけると、物事の見方が多角的になるよね。
自分の取扱説明書をつくる
なんだかんだ、僕は悩むのが好きなんやと思うんよね。うまくいってるときは逆に不安になるというか。「どこかに落とし穴があるんじゃないか」って(笑)
──その感覚、分かる(笑)
世の中には、いちいち悩まずに効率よく成果を出していく人もいるし、そういう人に憧れた時期もあったんやけどね。僕にとっては、うだうだ悩んだり右往左往したりする時間もすごく大切やなと思ってて。後から振り返れば「いい時間だったな」って思うし、悩む時間も含めて幸せで。「悩む」っていうのはもう、僕の特性なんやろうね。
──子どものときから深く考えるタイプだった?
子どものときはそんなことなかったかな。考えてるようで考えてない、みたいな。内省とか知らなかった。
──そうなんだ。じゃあ後天的なもの?
そうだと思う。子どものときは今よりもっと感覚派な面が強かったから、泣いてる子がいたら自分も泣いちゃうし、本やマンガで主人公が辛い思いをするシーンは絶対に読めない、みたいな感じで。人の感情をそのままもらっちゃうようなタイプだった。
これは今でもよく覚えてるんやけど、幼稚園に通いはじめて最初の半年間くらい、毎日部屋のすみから動かなくて。登園から降園までずっと泣いてた(笑)
何でそんなことになるかと言うと、心理学の先生いわく「心の防御壁がないから全部受け取っちゃう」ってことだったみたいで。防御できないからこそ、大人になった今では必要以上に人との距離を取りたがるようになったんやけどね。
──なるほどなあ…。自分と外界との境界線を引くことって、大事だよね。
いやあ、大事だよ。
──私も境界線がゆるいタイプだから、ニュースとか見れないもん。辛くなっちゃって。
分かる(笑)でも、そういう自分とうまく付き合っていくしかないもんね。取扱説明書がほしい!って思うけど、それも自分で作っていくしかないから。
35年間自分と一緒にいてもまだ分からないこともあるけど、ちょっとずつ分かってきたこともあって。年々、取扱説明書の一文が増えたり、書き換えられたりすることで、だんだん生きやすくなってくるような気がするなあ。
──年齢を重ねることの良さってそこにあるよね。自分に関するデータがたまってきて、「あ、これはもう変えられない自分の特性なんだ」って納得できたりするから。
そうだよね。そう考えると、歳を取るっていいことだね。もちろん、体力の衰えを感じるときは悲しいんやけど(笑)
自分のことをよく知っていって、まわりの人ともうまく関わっていけたら、かっこいい歳の取り方ができそう。「かっこいいおっさんになりたい」っていうのは、一つの大きなテーマだなあ。
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健ちゃんと話すたび、似ているところがたくさんあるなと感じます。二人とも考えるのが好きだから、いくらでも話し続けられてしまいそう…(笑)
次回の縁側じかんはどんなテーマになるでしょうか?どうぞお楽しみに!
取材・文 塩冶恵子