まるで縁側でお茶をしながら雑談するように、出雲SPICE LAB.代表の山田健太郎がおしゃべりをする連載『縁側じかん』。ライターの塩冶恵子が聞き手となり、健ちゃんがそのとき一番話したいことを自由に話してもらいます。
前回は「お金との向き合い方」について話した2人。「自分のモノサシで生きていこう!」と思いつつも、周りを見て揺らいでしまうこともゼロではない。そんな話から、「自己承認と他者承認」の話へと広がっていきます。
心のヒビを直す薬、コップを満たす水
話しててふと思い出したんやけど、「自己承認と他者承認」の話ってしたことあるっけ?
──ううん、ないかも。
よく心が弱いことを「ガラスのハート」なんて表現されるけど、あれはまさにその通りで。ガラスの強弱はあるにせよ、人の心はガラスでできたコップでイメージするといいよ、って心理学を学んでた時に教えてもらったのよ。
その心のガラスコップに水を溜めると満足感が得られたり、幸せを感じたりするんやけど、水を満たそうとしても、もしガラスにヒビが入っていたら、どんどん漏れていってしまう。
他人からもらう承認っていうのは、そのコップに注がれる“水”みたいなもので。
水を足してもらったときは、一時的に「満たされた!」って感じるけど、ヒビが大きければ大きいほど、水はすぐに漏れてなくなってしまう。そしてまたすぐに「もっと欲しい」ってなる。いくら注がれても、虚しさが残るんよね。
ガラスのコップに深くヒビが入ってしまって、水がたまらない。その状態が続くと、心が壊れてしまうこともあるって言われてて。
──うんうん。
一方で、自己承認っていうのは、コップのヒビを直す“薬”らしくて。
割れたところを丁寧に、少しずつ修復していく。これは、他人の承認ではできないんよね。他人からもらうのはあくまで“水”やから。自分で自分をちゃんと承認してあげて、コップそのものを直していくことも大事で。
傷ひとつないピカピカなコップっていうのは、基本的にありえない。人と関わる以上、傷つけられることはあるし、自分で傷つけちゃうこともあるしね。同時に、いくらコップが綺麗でも、水が注がれなければ満たされない。
やから、自己承認と他者承認のどっちも大事なんだよ、って。その話を聞いて、めちゃくちゃその通りやなって思ったんよね。
──なるほどなあ、たしかに。
この前のお金の話ともつながるけど、今の自分の生活に満足してるつもりでも、ふと周りを見た瞬間に、急に隣の芝が青く見えたりしてさ。そうすると、せっかくたまってた水が、コップの割れ目から一気に漏れ出していく(笑)。
でも、そんなときには自分でコップを修復したり、ときどき誰かから「山田の生活って最高だよね」って、水を注いでもらったりして。
その繰り返しなんやろうなって思うよね。
自分にマルをつけるのってむずかしい
ただ、得意不得意もあるよなと思ってて。自分を褒めることが苦手だったり、なかなか人からの承認をもらいにいけないっていうこともあるやろうし。
──そうだね。私は両方苦手かも……。
そっかあ。個人事業主やし、移住したばっかりやし、他者からの承認をもらいにくい環境っていうのもあるかもしれんね。自分で自分を褒めることもあんまりできてない?
──うん、まったく(笑)。昔から、自分に対してすごい高いハードルを課しちゃうんだよね。結局できなくて自分を責めるか、できても「これくらい当然でしょ」って思っちゃうか。
あ~、わかるなあ!なんであんなに自分に厳しくしちゃうんやろうね。
「今日はここまで作業を進めよう!」と思ってたのに、昼寝しちゃったりして。そんな自分を責めたりするんよね(笑)。
──あるある!それがたとえば友だちだったら、「疲れてたんだね。きっと睡眠が必要だったんだよ」とかって言えるんだけど。
ほんまにそう。調子が出ない日があって当然やし、別にサボってるわけじゃないと思うんよね。体を休めることだって必要なわけやし。
「それでいいんだよ」って、自分で自分にマルをつけられるといいよね。
不調な自分も受け入れる
僕自身も、ほんまに波が激しくてさ。昨日までは「何時間でも仕事できる!」って感じだったのに、今日は急に「もう無理!誰とも会いたくありません!」ってなって(笑)。みんながオフィスで働いてる中、車に逃げ込んで脱出したりね。
しかも、困るのは、いつその不調がやってくるかわからんってこと。せめて予測できたらまだ対処のしようがあるのになあって思うけど、それもできんから、余計しんどいんよね。
──わかるなあ。
でも、自分の調子を完全にコントロールしようとしたり、「いつもベストな状態でいなきゃ」って思うこと自体が、そもそも無理があるんかもしれん。
──そうだね。私たちも生きものだし、天気に左右されることもあるし、ホルモンとか、いろんな要因があるもんね。
そうそう。調子が悪い日があるのも、当たり前なんやと思う。そのままの自分を受け入れるって、やっぱ大事なことよね。
それに、今みたいに誰かと話したり、「ちょっと調子悪くてさ」って口に出して伝えるだけでも、気持ちが軽くなったりするよね。
コップのヒビにちゃんと気づいて、傷が深くなる前に一回立ち止まる。そんなふうに、自分を労わることも、きっと自己承認のひとつなんやと思うなぁ。
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この記事を書いている今日も、朝ごはんのあとに二度寝してしまい、「あ〜あ……」となっていた私。でも、「寝てしまったこと」よりも、「がんばっている私」に目を向けてあげたいなと思いました。
自分で自分にマルをつけるって、なかなかむずかしい。でも、少しずつでも練習していけたら。「自分に優しくする」が、いまの私のテーマです(笑)。
次回の縁側じかんも、どうぞお楽しみに!
取材・文 塩冶恵子